相続の対象となる財産
相続財産となるものは、原則として死亡時に存在するすべての財産(一身専属権は除く。)です。
不動産、預貯金、動産、債権など、被相続人が所有していた一切の財産に加え、前述のように、負の財産つまり「借金」も相続の対象となります。
相続の対象にならない財産
よく世間一般で誤解されているのですが、以下のような財産は、原則として相続財産となりません。
1 生命保険金
契約者が被相続人で、受取人も被相続人になっているものは相続財産になります。
しかし、契約者が被相続人でも、保険金の受取人が別の方の場合には、これはその受取人に指定された人の固有の権利であって、相続財産にはならないのが原則です。例えば、奥さんを保険金の受取人として、ご主人が保険をかけていた場合に、ご主人がなくなり、死亡保険金1000万円が奥さんに支払われたという場合には、この保険金は奥さん固有の権利であって、相続財産として他の相続人と分けなければならないということはないのです。
ただし、相続税の関係ではこの保険金も相続財産とみなされて計算されますので、税金と法律とで乖離があるといえるでしょう。
また、生命保険金が預金と同旨されるような特殊な事例では例外的に相続財産と同じ扱いにすべきとの裁判例もあります。
2 死亡退職金
被相続人が死亡したことにより支払われる死亡退職金は、勤務先の就業規則などで受取人が指定されている場合は、前記の生命保険金等と同様にその指定された受取人がもらうことになり、相続財産とはなりません。
一方、勤務先で特に規定などが設けられていない場合は相続財産となります。
3 お香典・弔金
被相続人の葬儀等でいただくお香典などのお金は相続財産ではありません。これらは「死者の供養」や「遺族への弔意」を意味するものであり、また、遺族の葬儀費用の負担軽減に役立てるものであるため、これらは喪主が受給します。
4 祭祀財産
家系を記した系図(系譜)、位牌、仏壇、墓地・墓石など、先祖のまつりごとを催すために必要な道具を祭祀財産といいます。
これらを相続人間で分割してしまうと祭祀に支障をきたしますので、これらは相続財産とは区別され、「祭祀継承者」へと引き継がれます。